遠い匂い
寒いのは嫌いだけど、冬は好き。
約一年ぶりに首に巻いたマフラーからは
なんだか去年の冬の匂いがした。
同じように久しぶりにつけた暖房の
ホコリの混じった匂い。
冬が少しだけ顔を出しているようだった。
甘味料がたくさん入った安いココアの匂いも
つうんと鼻の奥を突き刺す冷たい風の匂いも
なんだか全部…。
匂いというのは不思議なもので
過去の記憶と結びつくことが多々ある。
そうやって遠い匂いが思い起こされたときに、
一瞬だけあの頃に戻れる。
僕はこれはひとつのタイムトラベルだと思っている。
甘酸っぱい思い出や、青い思い出も
楽しい出来事も悲しい出来事も
まるで『僕らを忘れないでね』
って僕の中の思い出たちが主張しているような。
いや、本当にそうかもしれない。
上書きされていく思い出たちが負けないように
僕らも思い出してよって訴えてるんじゃ…。
ねぇどう思う?
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